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 2004年10月末に台風23号が上陸、日本本土への年間上陸数10回を数
え、気象庁の記録を大幅に更新した。
 今回、日本列島を九州から東北地方まで日本列島を縦断し、各地に大
きな被害をもたらしたが、とくに土砂災害や中小河川の堤防決壊など多発
し、全国各地に甚大な爪あとを残した。
 各報道機関は、死者・負傷者・行方不明者・避難住民・床上床下浸水・
建物損壊・道路鉄道情報・インフラ被災・救援状況などニュースが流され
る。
 しかし、災害復旧に飛び回る技術関係者のニュースに流れない裏情報
は表面に出ることなく闇に葬られて行く。
 役場の電話が不通・予備電源の容量不足・サーバやシステムの冠水・
雨量計データの欠測事故・停電の二次三次被害・避難勧告の遅れなど枚
挙に暇が無いほどの失態や防災の盲点が新聞紙に包まれて記憶の彼方
に流されて行く。
 ただし、マスメディアの中には鋭く指摘する記事もあるが、文系出身者
が多いためか、理系(電気電子)問題に関する切り口が甘すぎる。
 「今度の災害は天災で人災では無い」と言うお役人は役場を去るべきだ。天災で済ますなら何ら進歩は生まれない。どんな自然災害でもリスク削減出来なかったか常に「未必の故意」を念頭に、地域の危険度を知り、リスク削減への手段を講じていただきたいものである。
 昔は農業が地域の「結(ゆい)」を育んだ。現代では近所付き合いは希薄になり、唯一「現代の結」になりそうなのが地域防災活動であり、定期防災訓練も大事ではあるが、豪雨が予想される場合の「自主避難」や「早期避難勧告」はたとえ予想が外れても内外から非難されるものではないと思う。
 台風22号以降「自主避難」が各地にて増加し、推定の域は出ないが死者・不明者が減少したのではと私は見ている。「早期避難は最大の防御」と考える。近隣の老若男女が一つ屋根の下に寝泊りし、災害弱者の避難を助け地域安全のために気配りする機会はおざなりになりがちな訓練とは比較にならない実体験である。
 この実体験の繰り返しを通して青少年の心に「地域自主防」の意義を芽生えさせ地域自然特性や連帯感を育むことにつながるものと思われる。 今後「時間遅れの避難勧告は役場の恥」と関係者は肝に銘ずることである。
2004年日本に上陸した台風
台風
上陸日
上陸時の気圧
死者・不明
ルート
 4号
 6月11日
994hp
0
 6号
 6月21日
965hp
4
10号
 7月31日
980hp
3
11号
 8月 4日
996hp
15号
 8月20日
980hp
10
16号
 8月30日
950hp
13
18号
 9月 7日
945hp
22
21号
 9月29日
970hp
28
22号
10月 9日
950hp
10
23号
10月20日
955hp
91
1999年の広島豪雨を機に制定された土砂災害防止法だが、全国で土砂災害の危険箇所は21万ヶ所も
あるのに対し、都道府県による避難整備を求める指定はわずか213ヶ所。そのほとんどは広島県であり、
法律は出来ても他の都道府県は「笛吹けども踊らず」の状態である。誰も自分が住む土地が「危険」のレッ
テルを貼られたくないし、行政側も「移転保障」がネックとなって指定が進まない。つまり、「法律に魂」が入
っていない状態にある。

川の防災対策もお寒い。国土交通省が今年行った河川堤防の緊急点検で、コンクリート護岸の破損や堤
防の亀裂などの問題箇所が975ヶ所見つかった。今度被災した地域に限らず都道府県管理の中小河川
の多くは地方の財政難もあり対策は遅れているばかりか、法律的義務もないことからハザードマップすら
手付かずの状況である。

河川工事の変遷を辿ると、国家的河川工事の始まりは明治にさかのぼる。明治政府で河川整備をリードし
たのは、オランダ人技術者だった。その技術ベースは欧州大陸の流れの遅い河川を対象とする均一型の
堤防護岸オランダ工法であり、急流が多く地域によって地形も違う日本において、文明開化の風潮の中に
あって、そのまま採用されてしまった。1896年河川法が制定され、国の直轄治水工事が本格化し、欧州
留学経験者が内務省の技術官僚が担当し、戦後は建設省河川課が引き継いだ。明治以降の治水思想は
堤防を高くして氾濫を川の中に押し込める」であり、平成になっても基調は変わっていない。最近、河川工
学の教授の中には「川はあふれることもある」を前提とした近世の水害防備林や二線堤(二重の堤防)など
日本人の知恵によって各地に残っていた治水を見直そうとの声が上がっている。

防災大手企業の部長さんが小声で話してくれた。「お役人は防災関係にお金を出したがらない。どうしてか
解りますか?。防災監視装置を設置して災害が起きると人災になり、設置しなければ天災になるとお役人
が話してましたよ・・・」と耳を疑いたいような話に接した。お役人の百人に百人とも同じでは世も終わりであ
り、例外と信じたいものであるが、話を聞いた時点では理由は解らないが「そうかもしれないな」とうなずい
てしまったものである。地域財政難の折柄、危険箇所の補修も行われず、監視装置も設置されない行政、
お年寄りや災害弱者を救い得ない防災対策からの脱却を祈りたい。

政治の根幹は「人命の尊厳」と「治山治水」にある。間伐や下刈りなど行われず山間部は荒れ放題で土石
流をはじめとする土砂災害が頻発しており、放水路から放出された材木や土砂が養魚場に被害を与え、下
流域の橋げたに流れ来た木々が堆積し、後かたずけなど様々な弊害を近隣市町村に与えている。働き口
がしだいに少なくなっている土木関係肉体労働者の雇用先(請負制)として治山工事や河川改修工事など
への移行を図ることを提案したい。河川を取り囲む上流・中流・下流域の広域市町村が共同出資し民間グ
リーンファンドを募り地元金融機関の応援をもって「市民による治山治水」に取り組んだらいかがと思う。
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